1on1を始めたものの「何を話せばいいか分からない」「雑談で終わる」——多くのリーダーが同じ悩みを抱えます。スキルティ代表・中塚敏明は、著書『チームのワークエンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント』で、その根源をリーダーが「判断基準」と「共通言語」を持たないままマネジメントしていることだと指摘します。本記事では、1on1シートの役割・項目(フォーマット例)・質問テンプレート集・記入例、そして過去/現在/未来で振り返る対話設計まで、迷わない1on1のために解説します。

1on1シートとは?役割

1on1シートとは、上司と部下の1on1で「テーマ・質問・合意事項・次のアクション」を記録するフォーマットです。部下が事前に記入することで、限られた時間を有効に使え、対話の質と継続性が高まります。記録が残るため、前回からの変化=成長も追えます。

1on1が「雑談」で終わってしまう理由

原因の多くは「準備不足」と「上司が話しすぎ」です。テーマを決めずに始めると近況報告で終わり、上司が指示・アドバイス中心になると部下は受け身になります。中塚は、ここに共通言語(スキルマップ)の不在が重なると、リーダーは「何を基準に何を伸ばす話をすればよいか」が分からず、対話が深まらないと指摘します。シートで事前にテーマを決め、共通言語を持って臨むだけで、1on1は大きく変わります。

1on1シートの項目(フォーマット例)

項目ねらい
最近の状況・コンディション変化の把握・心理的安全の確保
うまくいっていること強み・成功体験の承認
困っていること・相談つまずきの早期発見
目標・スキルの進捗成長の確認と軌道修正
上司・会社への要望支援ニーズの把握
次回までのアクション合意事項の明確化

対話の設計|過去・現在・未来で振り返る(中塚思想)

中塚は、1on1を業務の「過去(振り返り)・現在・未来」で対話する設計を勧めます。最大のポイントは、表に出ている課題だけでなく、部下が潜在的に抱えている不安まで言語化して解消すること。人は、言葉にできない不安を抱えたままだとパフォーマンスが落ちます。1on1で「現在の業務不安」を顕在化し、対話を通じて解いていくのです。

時間軸対話のテーマ
過去業務の振り返り。成果・うまくいった要因/つまずきと学び
現在いまの業務状況・困りごと・潜在的な不安の言語化
未来伸ばしたいスキル・キャリア・次の一歩

このとき、スキルマップという共通言語・ものさしがあれば、「次にどの力を伸ばすか」を上司・部下が同じ基準で話せ、1on1が“雑談”から“成長の場”に変わります。

そのまま使える質問テンプレート集

【過去=振り返り】

  • 最近の仕事で、手応えを感じたことは?うまくいった要因は何だと思いますか?
  • 逆に、つまずいたことは?次に活かせる学びはありましたか?

【現在=いまの状態・不安】

  • いま一番時間を取られている/困っていることは?
  • 言葉にしづらいけれど、気がかりなことはありますか?(潜在的な不安を引き出す)
  • その課題に、私が手伝えることはありますか?

【未来=成長・キャリア】

  • これから伸ばしたいスキルは?そのために必要なものは?
  • 半年後、どんな状態になっていたいですか?

コツは「上司が話す」より「部下に話してもらう」こと。はい/いいえで終わらないオープンな質問を中心に置きます。

業務の「目的・納期・完成イメージ」をそろえる

中塚は、若手とのすれ違いを防ぐために、業務の指示・確認で「①目的 ②納期(具体的な時間まで) ③完成イメージ」をそろえることを重視します。1on1でも、進行中の業務についてこの3点を擦り合わせると、認識のズレと手戻りが激減します。これは社会人基礎力(前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力)を実務で鍛えることにもつながります。

記入例(イメージ)

例:「うまくいっていること=新規提案が通った/困っていること=資料作成に時間がかかる(締切前に焦る=潜在不安)/要望=提案テンプレを共有してほしい/次アクション=上司がテンプレ共有、本人は次回までに1件作成」。具体と次の一歩まで書くと、1on1が前進します。

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頻度・時間の目安とNG例

頻度は2週間に1回〜月1回、時間は15〜30分が目安。短くても継続が大切です。NG例は、①上司が一方的に話す、②評価・詰めの場にする、③決めたアクションを次回に振り返らない。これらは部下の本音を閉ざします。

1on1が「ワークエンゲージメント」を育てる

中塚は、1on1を通じて成長の手応えが生まれると、仕事へのワークエンゲージメント(活力・熱意・没頭)が育つとしています。共通言語(スキルマップ)に基づく対話は、リーダーの「寄り添い疲れ」を減らしながら、部下の活力を引き出す——これが“仕組み”で回す1on1です。

1on1で「社会人基礎力」を育てる

とくに若手との1on1では、経済産業省が定義する社会人基礎力=3つの能力・12の能力要素を意識すると、対話が成長につながります。スキルマップの土台にもなる力です。

3つの能力12の能力要素1on1での問いかけ例
前に踏み出す力主体性/働きかけ力/実行力「自分から動けた場面は?妨げになったものは?」
考え抜く力課題発見力/計画力/創造力「その課題の原因は何だと思う?他のやり方は?」
チームで働く力発信力/傾聴力/柔軟性/情況把握力/規律性/ストレスコントロール力「周囲とどう連携した?助けを求められた?」

信頼関係をつくる「傾聴」のコツ

1on1は上司の“面談”ではなく、部下のための時間です。中塚も、上司がフラットに部下の話を傾聴し、困ったときに助ける姿勢が組織の強みになると述べています。①さえぎらず最後まで聴く、②評価・否定をいったん保留する、③「それで?」「もう少し聞かせて」と促す——この傾聴姿勢が、潜在的な不安を引き出し、心理的安全をつくります。

1on1をスキルマップ・週報と連動させる(PDCA)

1on1を単発で終わらせないコツは、スキルマップ・週報と連動させることです。週報(スキルボックスのチェックリスト)で見えた達成・未達成を1on1で振り返り(Check)、次の行動を合意(Action)、スキルマップ上の「次に伸ばす力」を一緒に決める(Plan)。こうして1on1が能力開発のPDCAの“対話エンジン”になります。共通言語があるから、上司も部下も同じ基準で話せます。

中小企業・リモートでの1on1

リモートやプレイングマネジャー化で、上司が部下を観察しきれない時代です。だからこそ、スキルマップという共通言語と、事前記入の1on1シートが効きます。人事専任がいない中小企業でも、月1回・15〜30分の1on1を“仕組み”として固定するだけで、育成と定着は大きく変わります。

よくある質問(FAQ)

1on1シートは誰が書きますか?

基本は部下が事前に記入し、上司が当日に追記します。部下主体にすることで、本人が話したいことを中心に進められます。

1on1の頻度はどのくらいが良いですか?

2週間に1回〜月1回が一般的です。短時間(15〜30分)でも、継続することが効果につながります。

1on1で話すことがないときは?

「過去・現在・未来」のどれか1つから入れば大丈夫です。スキルマップがあれば「次に伸ばす力」を共通言語で話せます。

1on1と人事評価面談は同じですか?

別物です。1on1は成長支援の対話、評価面談は査定の場。中塚は「評価と能力開発は切り離す」ことを勧めています。日頃の1on1で擦り合わせておくと、評価面談もスムーズになります。

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