従業員満足度(ES)と従業員エンゲージメントの定義・違いまとめ
「従業員満足度(ES)」と「従業員エンゲージメント」は、どちらも従業員の意識を測る指標ですが、評価の「物差し」が根本的に異なります。従業員満足度は個人の主観(給与・職場環境・福利厚生への満足感)を基準とするのに対し、従業員エンゲージメントは会社が目指す方向性を共通の物差しとして、従業員の理解度・共感度・行動意欲を測ります。
| 項目 | 従業員満足度(ES) | 従業員エンゲージメント |
|---|---|---|
| 評価の物差し | 従業員個人の主観・希望 | 会社の目指す方向性(共通基準) |
| 主な調査内容 | 給与・福利厚生・職場環境への満足度 | 会社への共感度・理解度・行動意欲 |
| 業績との関連性 | 明確な相関が検証されにくい | 組織活性化・課題解決との連動を重視 |
| 主流だった時期 | 1920年代〜1980年代 | 1990年代以降〜現在 |
この違いを理解しておくことで、自社の組織課題に対してどちらの調査が適切かを判断しやすくなります。本記事では、歴史的な背景とともに両者の違いをさらに詳しく解説します。
※こちらの記事は、著書「従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント」の内容を基に構成しています。
前回の記事 再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.1では「従業員エンゲージメント(従業員が抱く企業や組織に対する愛着や信頼度合い)が再注目されている背景」をお伝えしましたが、今回の記事では、「従業員満足度から従業員エンゲージメントへと評価指標が移り変わっていった背景」を分かりやすくお話ししていきましょう。
従業員満足度(ES)とは?

さて、本題に入って行く前に、今回のキーワードの1つである
「従業員満足度(ES)」とは何かを、押さえておきましょう。
今、従業員満足度を重視する企業が増えていますね。
「従業員満足度(ES)」とは、「『福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなどに対して、社員がどの程度満足しているか』を示す指標」です。
英語で書くと「Employee Satisfaction」。
エンプロイイーサティスファクション、と読みます。
この英語の頭文字を取って、「ES」とも呼ばれていました。
最近では、「働きやすさ」や「働きがい」を重要視する人が多いですよね
自分も働くなら、なるべくストレスの少ない、働きやすい職場がいいと思います。
さて、今回は
「従業員満足度から従業員エンゲージメントへ 再注目される「エンゲージメント」
著書スキルマネジメントPart.2」の、特集です!
従業員満足度(ES)から従業員エンゲージメントに至る歴史

では、この記事をご覧の皆さまは、「従業員満足度(ES)と従業員エンゲージメントの違い」を説明できますか?
「同じものの言い方が違うだけだよね?」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんよね。
確かに両者とも「従業員への意識調査の指標となる概念」であることは同じです。
そのため、『日本企業がエンゲージメント経営を実践する5つの要諦』(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー論文 岡田恵子、吉田由紀子ほか ダイヤモンド社 2020)を参考にしながら、確認していきましょう。
「『ウイリス・タワーズワトソン』社(※アメリカのイギリス系コンサルティング会社)の調査結果」によれば、「『従業員意識調査』の始まり」は、「1920年代頃のアメリカ」であると言われています。
以降、1980年代まで、「従業員意識調査における主流のサーベイ(組織調査)」は、「従業員満足度調査」とされてきました。
「従業員満足度調査」って、そんな昔から実施されていたんですね!

しかし、1990年頃から「実施されるサーベイ」が「従業員エンゲージメント調査へと移行」しました。
その背景には、従業員を「資産」から「投資家」とみなした「経営者側の意識転換」があったのです。
また、別の背景としては、「従業員満足度の上昇と企業の業績アップ」に、「明確な関連性が検証されなかった」ことも挙げられるでしょう。
せっかく「多額の資金を投入して、従業員が満足しているか調査をした」のに、予想を下回る結果しか得られなかったのです。これは、たくさんのお金を投入した企業サイドからすれば、さぞガッカリ案件だった事でしょう。
「費用対効果(コストパフォーマンス)の悪さ」を知ったのです。
コスパ、大事!
コスパの悪い調査して、会社が赤字になってたら意味ないですよね。
それを痛感して、経営者側が落胆したのです。
こうした理由から、近年では「従業員満足度調査の進化版」とも言える「『従業員エンゲージメント調査』に企業の注目が集まっている」というわけです。
本記事の内容はこちらの書籍をもとに作成しています

従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント:中塚敏明著
従業員満足度(ES)と従業員エンゲージメントの違い
弊社(スキルティ株式会社)がお世話になっている『リンクアンドモチベーション』社のエンゲージメント・サーベイでは、「従業員エンゲージメント」は、「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」と提唱されています。
『日本企業がエンゲージメント経営を実践する5つの要諦』内の言葉で言い換えれば、『会社が目指す方向性や姿を物差し』として、従業員がそれらについての自身の理解度、共感度、そして行動意欲を評価する」ことに当たるでしょう。
一方、既に説明したように、「従業員満足度」は、
「『福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなどに対して
社員がどの程度満足しているか』を示す指標でしたよね。
実は、満足しているように見えても、会社のやり方に不満があったり
企業サイドが想像もしないような事で、悩んでいたり。
そういうことって、普通によくありますもんね。
従業員エンゲージメントを調査することは、企業サイドにとってもプラスですが
社員サイドから見ても「誰にも言えない、不安や悩みをわかってもらえた」という気持ちになって
救われれる事が、あるようでした。

『日本企業がエンゲージメント経営を実践する5つの要諦』内の言葉で言い換えると、『従業員が自身を物差し』として、所属する組織や職場での日々の態度、上司や自身の仕事などについて評価することになります。
調査してみると、企業側の「こうしてほしい」という思いと
社員側の「こうしてほしい」思いって、けっこう差がありそうですよね。
エンゲージメントを調査し
改めて整理することで、「それぞれの概念的な違い」や「調査の前提条件」が「全く異なっている」ことに気づくでしょう。 それがきっと、大切な気付きなんでしょうね。
これらの違いについてのさらなる理解を深めるためにも、より具体的に見ていきましょう。
実際の従業員エンゲージメント調査では、「会社が目指す方向性を設定して」調査を行います。
なぜこのようなことをするかというと
・人と組織の活性化を進めるために、取り組むべき課題
・会社と従業員双方が、データを介して発見していくための調査
を、クッキリ明確にしていきたいからです。
実際の質問項目には、「自社の望ましい未来像」が反映されており、「回答する従業員に内省(ないせい)を促す」意図も込められています。
ちなみに「内省(ないせい)を促す」という言葉には
「自分自身と向き合い、自分の考え、行動について振りかえる」という意味がありました。

つまり、企業は従業員エンゲージメント調査をする事で
従業員に「今いちど自分と向き合って、会社についてどう思っているのか
この先の未来で、どうして行きたいか?」
を、考えてもらいたい。という事なのでしょう。
それは、大切な時間となりそうですね!
参考までに、書籍『グロービスMBAミドルマネジメント(グロービス経営大学院 ダイヤモンド社 2021) 』から抜粋してきた質問項目をいくつか並べてみましょう。
◆従業員エンゲージメント・サーベイの質問項目例
○私は、自分の会社全体としての目的・目標・戦略をよく理解できている
○経営陣は、事業の方向性について健全な意識決定をしている
○自分の会社で働くことに誇りを持っている
○自分の会社はよい職場だと他の人にも勧めたい
○自分の仕事について、給与や福利厚生など公正に報酬を得ていると思う
参考:「グロービスMBAミドルマネジメント」(グロービス経営大学院 ダイヤモンド社 2021) より
なぜこの箇所を引用してきたのか分かりますか?
実は「従業員満足度調査」と「従業員エンゲージメント」では「物差し(=基準となるもの)自体に違いがある」からです。
この2つって、全然方向性の違う調査なんですよね。

従業員満足度調査の場合、「会社が目指す方向性を不透明にしたまま」、調査は行われます。
「社員個人の希望、不満、願い」といった、個人のアンケートになるわけです。
「職場環境」や「給与」、「福利厚生」、「仕事内容」、「上司によるマネジメント」などの「質問項目に対する評価基準」は、 自分にとって満足できるかどうかという『従業員の主観』に委ねられるからです。
さらに気を付けるべきポイントとしては、「同じ質問であっても、『基準が個人によって異なること』」が挙げられます。 まあ、個人的にどう思っているか?
という調査だから、そうなりますよね。
同じ会社にいても、タイプの違ういろんな従業員がいると思います。
ですから
指示に従って、決まった手順で業務を行うこと』を好む従業員もいれば
自分でガンガン仕事取ってくるタイプや
変化を嫌うタイプ、マニュアル大好きタイプなど
本当に、さまざまなタイプの人間がいると思うのです。

ですから「従業員満足度調査」の評価をすると、「個人のライフスタイルや仕事観が、ダイレクトに反映される」というわけです。個性が出そうですね!
また、満足度調査の結果を受けて「仮に本人の希望が叶った」としても、人間の欲望には限りがないため、他の不足面に目が移るという可能性も、考えられます。
考えられると書きましたが、個人の希望を書くだけでいいなら
・毎月手取りで、100万ほしい
・有給いっぱい
・お昼寝OKの仕事
とか、むちゃくちゃワガママな欲望を、羅列することになってしまいそうですよね。
私は書いてしまいそうです。

こうした傾向がエスカレートしていくと、従業員の意識は「自分にとって都合が良い条件・働き方」を望む方向を示し、かえって「組織の生産性向上を期待できなくなる」かもしれません。
希望だけでいいなら、どんだけでも書けますから。
要するに、「従業員エンゲージメント」の場合、「基準となる物差しはひとつ」しかありませんが、「従業員満足度調査の物差し」は、「従業員の数だけ存在する」わけです。
そのため、「個人の処遇を改善した」としても、「必ずしも組織全体の活性化や課題の解決には結び付かない」とも言えるでしょう。
以上のことから、「従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い」は、前もって知っておく必要がありますね。
次回従業員満足度のままで陥る落とし穴 再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.3では、実際に弊社が陥ってしまった「思わぬ落とし穴」のお話をしていきたいと思います。
よくある質問(FAQ)
Q. 従業員満足度(ES)と従業員エンゲージメントは何が違うのですか?
A. 最大の違いは評価の「物差し」です。従業員満足度は給与や職場環境など個人の主観を基準にしますが、従業員エンゲージメントは会社が目指す方向性を共通の基準として、従業員の共感度や行動意欲を測ります。そのため、同じ質問でも調査の前提条件が根本的に異なります。
Q. なぜ1990年頃から従業員エンゲージメント調査に移行したのですか?
A. 主な理由は2つあります。1つは、従業員満足度の向上と企業業績アップに明確な相関が検証されなかったこと。もう1つは、経営者が従業員を「資産」ではなく「投資家」とみなす意識転換が起きたことです。費用対効果の低さを痛感した企業が、より業績に直結する指標として注目したのが従業員エンゲージメントです。
Q. 従業員満足度調査にはどのような限界がありますか?
A. 評価基準が従業員個人の主観に委ねられるため、同じ質問でも回答者によって基準が異なります。また、個人の希望が叶っても別の不満に目が移りやすく、組織全体の生産性向上に必ずしもつながらないという限界があります。個人の処遇改善が組織課題の解決に直結しない点が課題です。
Q. 従業員エンゲージメント調査は従業員にとってもメリットがありますか?
A. はい。エンゲージメント調査は従業員に自分自身と向き合う内省の機会を提供します。普段は言いにくい不安や悩みを整理・表明できる場となるため、「自分の気持ちをわかってもらえた」という安心感につながるケースもあります。企業・従業員の双方にとって有益な調査です。
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