eNPS −85から始めた透析クリニック。3年がかりの評価制度を「動く制度」にし、理念から処遇までを34ページの一本の線につないだ
創業約48年、入院病床と在宅血液透析を持つ透析専門クリニック。看護・臨床工学・検査・栄養・事務・薬剤の6部門約60名。院長は評価制度の構築、暗黙のルールの可視化、組織図、面談と改革を進めていましたが、エンゲージメントサーベイの結果は従業員エンゲージメント3.8/10、eNPS −85。「人事評価が公正」と答えた職員は1名でした。2022年から外部コンサルと構築してきた評価制度をベースに、MVVと行動指針5項目×5段階を透析現場の言葉で定義し直し、部署別ウェイト・等級別の定性/定量比率・昇降給と賞与への接続までを整備。skilltyの週次セルフチェックを「姿勢のルール」に組み込み、34ページのエンゲージブックにまとめて、2026年5月に本運用へ。
何が、どう変わったか
現在地 ― eNPS −85。「人事評価が公正」と答えたのは1名だった
E院は創業約48年、入院病床と在宅血液透析を持つ透析専門クリニックです。院長はここ数年、評価制度の構築、暗黙のルールの可視化、組織図の整備、面談、プレイングマネージャーのタスクシフト、勤務表のAI化や透析支援システムの導入と、矢継ぎ早に改革を進めてきました。
2025年春に実施したエンゲージメントサーベイの結果は、従業員エンゲージメント3.8/10(測定平均5.1)、eNPS −85(平均−54.6)。「人事評価が公正」と答えた職員は1名、「経営層が信頼できる」は2名、上司と話しにくいと感じる人が67%、福利厚生を使ったことがない人が86.7%。一方で「人間関係が良い」「助け合いの風土」は上位で、同僚との会話のしやすさは55%、新しい提案ができる環境は66%と、土台は残っていました。
この結果を、院長は隠しませんでした。「課題はどこにあるのかが明確になれば、今後の方針の決定にも役に立つ」。ここから、理念・評価・処遇を一本の線につなぐ1年が始まります。
▲ 理念から患者満足・経営までを一本の線でつなぐ設計図。E院ではValue4つを行動指針5項目に翻訳した(提案資料より)
背景 ― 改革しているのに、届いているかが分からない
院長の言葉です。「縁があってせっかく当院に入職してくださった職員の皆様が、働きやすく、働きがいのある職場にして、長く働いてもらいたい」。その思いで、透明性があり納得感の高い評価制度、暗黙のルールの可視化、誰が誰の上司かを明確にする組織図、面談を進めてきました。「しかし、従業員側から見て、本当に働きやすくなっているのかは分かりません」。
評価制度は2022年から外部コンサルと構築し、2024年11月にテスト運用に入っていました。役割定義と等級表はある。ただ、それが現場の言葉になっておらず、理念5箇条、英語4語のValue、役割定義表、賃金表がそれぞれ別の資料に散らばっていました。
選定の決め手 ― ゼロから作り直さない。「動く形」に整える
スキルティの役割は、制度を作ることではなく「動く形に整える」ことでした。契約上の修正範囲は「項目精査および表現の整備」。3年かけて作った役割定義・等級表を活かし、Valueを日本語4語(安心安全・丁寧確実/Hospitality/チームワーク/成長志向)に再編し、そこから行動指針5項目——仕事の質・スピード、患者様対応・接遇、チームワーク・報連相、自己研鑽・成長意欲、規律性——を5段階の具体行動で定義しました。
基準は透析現場の言葉で書かれています。患者様対応のDは「血圧測定時などに患者様に無断で身体に触れる」「穿刺ミスや衣服汚染時に謝罪がない」、Sは「言葉にならない要望も汲み取る観察力と想像力を有し、勇気を持ってニーズに応える」。Bが「クリニックの期待水準」、Aは+αの貢献、Sは周囲への指導・教育レベル。看護・臨床工学・検査・栄養・事務で行動指針のウェイトを変え、等級が上がるほど定性より定量の比率を上げる設計です。
活用の実態 ― 週次のセルフチェックを「姿勢のルール」に組み込む
運用の核は「姿勢のルール」です。接遇(注意は廊下で、私語や大声を慎む)、呼称(呼び捨て・ちゃん付け禁止)、スマホ(透析室での入力禁止)、院内SNS(見たら「いいね」で確認)と並んで、「skilltyのセルフチェックは毎週木曜。コンディションチェック→テンプレコメント→姿勢のルールチェックの順。守れなかった項目は理由をコメント」と明記されました。週次コメントのテンプレートには「前回約束した行動変化」「次回までに約束する行動変化」「必要なリソースや権限」、そして「よく眠れていますか?」が入っています。
評価サイクルは、毎月の定性1on1、3ヶ月の定量中間チェック、半期の査定。定量評価は部署×等級の役割定義表で、新人看護師なら「1ヶ月末プライミング→3ヶ月末チェック業務→6ヶ月末穿刺→8ヶ月末リーダー」と到達項目が時系列で置かれ、検査部なら「異常値が出た際に医師へ次の一手を提案」、医事課なら「レセプト改善・新規算定の提案」が項目になっています。2025年秋には、すべての役割定義に「目的・意義」と星5段階の採点基準を付けました。「なぜこの行動が求められるのか」を示すためです。
▲ 週報・コンディション・セルフチェック・1on1・評価を1つのシステムで回す(提案資料より)
試行錯誤 ― 規律性を評価から外す、看護部だけ比率を変える
2026年2月、運用しながら評価システムを改定しました。行動指針の「規律性」は定性評価から外し、姿勢のルール違反は減点ルールとして別管理に。評価が「減点の場」にならないようにするためです。「チームワーク・報連相」は「協調性・協力姿勢」と「報連相」に分割。看護部は定量化しにくい業務が多いため、下位等級の定性:定量比率を6:4と他部署より定性寄りにしました。
手当も整理しました。医療機器・防災・在宅透析などの特命手当を役職手当に統合し、昇降給は評価点をポイント化して等級ごとのピッチで毎年7月に反映、賞与は個人の評価掛率と月平均透析患者数による業績掛率の掛け合わせに。「評価は査定のためではなく、成長と納得感のため」を、給与の仕組みで裏づける形です。
これから ― 34ページの「クリニックの説明書」から、2回目の測定へ
2026年5月、理念5箇条、MVV、院長メッセージ、目指す未来(2026年基盤づくり→2028年ホスピタリティ深化→2030年在宅・QOL拡充)、現状の魅力と伸びしろ、行動指針と5段階、姿勢のルール、組織体制、評価の全体像、等級とキャリアラダー、能力開発、昇降給・賞与・手当、福利厚生までを34ページにまとめたエンゲージブックをお披露目しました。「透析は患者様と一生寄り添う医療」。それを支える仲間に向けた、クリニックの説明書です。
成果の測定はこれからです。スタート地点はeNPS −85。E院は2回目のサーベイで、この数字がどう動いたかを確かめる段階に入っています。
選定のポイントと、決め手
お客様の言葉
縁があってせっかく当院に入職してくださった職員の皆様が、働きやすく、働きがいのある職場にして、長く働いてもらいたい。院内に蔓延している暗黙のルールをすべて可視化し、迷いなく仕事に集中できる環境づくりを進めてきました。
— 院長(サーベイ実施にあたっての言葉)
これらの取り組みを行なっているものの、従業員側から見て、本当に働きやすくなっているのかは分かりません。課題はどこにあるのかが明確になれば、今後の方針の決定にも役に立つと思い、ご相談させていただきました。
— 院長(サーベイ実施にあたっての言葉)
透析は移植をしない限り、一生続けなければならない医療です。居心地良く過ごせるクリニックかどうかは、患者様にとって大問題です。
— 院長(企業理念の解説より)
導入のタイムライン
- 2022.05外部コンサルと評価制度の構築を開始(役割定義・等級表)
- 2024.11新評価制度テスト運用
- 2025.04〜05エンゲージメントサーベイ実施。MVV・行動指針5項目×5段階を定義。新評価制度 本運用
- 2025.06スキルティが従業員エンゲージメント報告書を提出(eNPS −85、課題と施策)
- 2025.08〜11評価制度の整備契約。役割定義に「目的・意義/基準/採点基準」を付与、定性・定量シート整備
- 2026.02評価システム改定:規律性を減点ルールへ分離、部署別ウェイト、等級別の定性:定量比率
- 2026.05昇降給・賞与・役職手当まで確定。エンゲージブック(34ページ)お披露目会
同じ課題を、御社の規模で。
この事例の進め方を、御社の業種・人数に置き換えてご説明します。30分・オンライン・無料。
まず小さく始めたい方には、初期費用を抑えた3ヶ月のPoCプランもご用意しています。
